
HARIO V60 MUGEN - EL SALVADOR TRES POZOS / PACAMARA NATURAL
トレス・ポソスのもつ鮮やかな酸と、トロピカルな果実味を濁りなくカップに落としこむためのレシピです。オレンジやチェリーのような明るい酸味と、なめらかで持続する甘みの両立を目指しています。
使用器具はHARIO V60 MUGENとSibarist Fast Filter。リブのないMUGENによる密着性と、Sibaristの透過スピードを掛け合わせることで、流速を構造的に担保し、チャネリングを防ぎながらクリーンな抽出を目指します。
レシピの核となるのは、注湯回数を3回に絞りこむことで、全体の抽出時間を構造的に短く完結させる設計です。MUGENの構造上、注湯回数が増えるほど後半の流速低下を招き、不要なビター感が出やすくなります。注ぐ回数を減らすことで、45秒の蒸らしで甘みの土台をつくったあと、つづく2投目でフレーバーの核を効率的に回収します。そのまますくない手数で抽出を終えることで、時間がかかることによる雑味の溶出を防ぎ、さらっとした甘さとスムースな口当たりを守ります。
仕上がったコーヒーは、温かいときはオレンジやチェリーを思わせる鮮明な酸が際立ち、温度が下がるにつれてトロピカルフルーツのような複雑で透明感のあるフレーバーへと変化していきます。トレス・ポソスらしい明るい酸味を最後まで心地よく楽しめる一杯です。


「今年もアルマンドさんの豆、届きました!」
店頭で、お客さまとカウンター越しに交わされる会話を聞くたびに、私は静かな手応えを感じます。
農園名ではなく、「アルマンド」という個人の名前でコーヒーが語られるようになったこと。それは、お客さまがたんに「味」を消費するだけでなく、その一杯の背景にある営みを理解しはじめてくださった証だと思うからです。
ウッドベリーコーヒーがアルマンドさんと歩みを共にして、4年になります。2022年に初めて現地を訪れたとき、私が直面したのは、不安定なサプライチェーンの現実でした。
もし、私たちが「今年は基準に満たない」と購入を控えたら、生産者はどうなるのか。収入の予測が立たない状態は、経営における最大の「急所」です。不安定な土台の上では、設備投資も技術継承もままなりません。私たちが最優先すべきは、その年の美味しさを評価することではなく、買いつづけることで、安定した品質を保ちつづける「循環のインフラ」を共に築くことだと感じました。
ある年、アルマンドさんから他国の大口注文が突如キャンセルされたと、悲痛な連絡が入りました。市場の論理でいえば、それは一時的な不運かもしれません。
しかし、ここで「関与しない」という選択をすれば、彼が明日もコーヒーをつくりつづけるための土台が崩れ、翌年のクオリティが下がるのは火を見るより明らかです。そのときに私たちが下した「できる限り買い取る」という判断は、たんなる同情ではなく、ウッドベリーとして当然の選択でした。
アルマンドさんは、栽培品種・プロセスを絞りこみ、検証サイクルを速く回すストイックな生産者です。変数をなるべく減らし、生産過程でなにが起きているかを特定しやすくすることで、高い再現性のもと品質を磨き上げ、輸送時の劣化も起きにくいようしてくれています。
対して、私たちの責任は、その磨き抜かれた価値をできる限り損なうことなくお客さまに届けることです。そのために、流通・保管環境を整えて豆のポテンシャルを劣化から守り、ローストから提供に至るまでの「表現」をくわえます。

今回の焙煎でいえば、パカマラ種とナチュラル・プロセスの特徴でもある甘さと質感を際立たせています。パカマラは一般的なコーヒーよりもかなり大粒で、内部乾燥が進みづらいため、投入温度を低めに設定し、徐々に火力を上げて焼き上げ、表面を焦がさずに内部まで適切に発達させています。また、一般的な浅煎りよりも DTR(全体の焙煎時間に対して、1ハゼから終了までの発達段階の時間が占める割合)をほんのすこし長めに取ることで、甘さと質感を最大化しています。
そうして、アプリコットやオレンジを思わせる果実感と、キャラメルのような甘さが特徴のカップに仕上げました。
生産者が生み出す「創造」と、私たちが一貫して管理し、選び取る「表現」。この二軸が揃って初めて、循環のインフラは整います。しかし、どれほど堅牢なインフラを構築しても、お客さまという「エンジン」がなければ、この循環が走りはじめることはありません。
「トレス・ポソス/パカマラ ナチュラル」がもつ複雑な情報のなかから、どの要素を際立たせ、「美味しさの焦点」をどこに合わせるのか?
私たちはこの循環を力強く駆動させつづけるために、お客さまが一杯の価値を感じ、そして、産地の営みにまで想いを馳せられるような焙煎・抽出をおこない、言葉を添えています。
その一杯を味わうことが、産地の未来を支えるインフラの一部になっている。そのたしかな手応えをお客さまに感じていただけるよう、私たちは美味しさのピントを合わせつづける努力を止めることはありません。
あなたが今日手にする一杯が、産地の明日を動かす力になる。 私たちはそのバトンを、最高の状態でお客様へとつなぎつづけます。








