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記事: Learning and Sourcing Coffee in Colombia

Learning and Sourcing Coffee in Colombia <Part1>

Learning and Sourcing Coffee in Colombia

Part01 コーヒーをかたちづくる現場の思考 ―― Qプロセシング① 佐藤 優貴

昨年の11月に、コロンビアを訪れました。私にとって、初めてのコロンビア訪問。主な目的は、アメリカのコーヒー機関である CQI(Coffee Quality Institute)が主催する「Qプロセシング・レベル2」(Qプロセシング2)という、コーヒーの生産処理について体系的に学ぶコースを受講するためでした。
生産処理(プロセス)とは、収穫したコーヒーチェリーを、果肉の除去・発酵・水洗・乾燥などの工程を経て、生豆に仕上げる作業のことです。
みなさんも、コーヒーを飲むときに「ナチュラル・プロセス」や「ウォッシュド・プロセス」「アナエロビック・ファーメンテーション」などの表記を目にしたことがあるかと思いますが、生産処理はコーヒーの味わいや品質を決める、とても重要な作業です。

Qプロセシング2は、各プロセスの方法や特徴、味わいに与える影響について、生産国で実技をまじえて実践的に学びます。テストに合格し認定されると「Qプロセッサー」の資格も取得できます。コーヒーの消費国側では一般的に「Qグレーダー」(CQI による品質評価の国際資格) が取得されますが、それに対してQプロセッサーは、生産国側で取得される資格だというふうに考えていただければよいでしょう。
ある意味では、日本国内でコーヒーを販売するうえでは必要のない資格です。そのうえ、取得のために生産国に行かなければいけないため、国内でQプロセッサーの資格をもっている人はおそらく20人にも満たないのではないかと思います。

しかしながら、私は、ダイレクトトレードをおこなうなかで農園の方とコミュニケーションをとることも多く、そのたびにある種の歯がゆさを感じていました。味を評価することができても、生産にかんするフィードバックが思ったようにできない。エルサルバドルでのCOE(Cup Of Excellence)ジャッジに参加したときも、勉強不足を痛感しました。

コーヒーの味を評価するだけでなく、さらに向上させるための改善策まで、解像度をあげて農園の方々と対話したい。そうした想いから、Qプロセッサーの資格を取ろうと思ったのです。
また、Qプロセシング2の受講とあわせて、買いつけもおこないました。コロンビアは、世界的にみても生産処理が発展した国のひとつです。今月から、コロンビア訪問記をお届けするとともに、生産処理についてお伝えしていきたいと思います。

コロンビアへ────

コロンビアに滞在したのは11月25日~12月15日の、およそ3週間。初めてフランス・パリ経由の飛行機に乗り、移動には丸一日近くかかったものの、これまでの旅路と比較して機内が快適で、身体的には楽でした。
中米・パナマに隣接し、南米大陸の北西に位置するコロンビアの国土は、日本の約3倍の114万平方キロメートル。南米大陸を縦断するアンデス山脈が、コロンビアで3つの支脈に分岐し、南北を貫いています。首都のボゴタはアンデス山脈の盆地にあり、それでも標高2,700mと、世界で3番目に高い位置にある首都です。そして、東山脈より東側はベネズエラとブラジルにつづく低地がひろがり、その北部は熱帯サバンナのリャノ平原、その南部はアマゾン熱帯雨林となっています。
今回の訪問では、国内の移動は飛行機に限られ、ほとんど街中しかみることができませんでしたが、それでもコロンビアは地理的にも生物的にも、そして民族的にもじつに多様な国だという印象を受けました。

コロンビアにコーヒーが伝来したのは18世紀末~ 19世紀初頭のこと。その後、生産量を増やし、ブラジルに次ぐアラビカ種コーヒーの生産国として知られています。1980年代にはコロンビアの輸出総額の半分ほどをコーヒーが占めたこともありました。しかし、90年代の「コーヒー危機」や鉱物資源など他の輸出品目の急増にともない、21世紀に入ってからは10%前後、あるいはそれ以下まで低下しているのも現状です。

しかしながら、アンデス山脈に連なる高標高の山々と、複雑で多様な自然環境のもとで育まれるコーヒーは豊かな風味をもち、さらに豊富な水資源を活かしたウォッシュド・プロセスによって、クリーンで品質の高いコーヒーとして知られています。

また、ウォッシュドにとどまらず最新の実験的なプロセスにも取り組み、近年はWBC(ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ)など、世界大会での発酵系ロットの優勝や入賞により、世界的な注目を集めています。

ナチュラル・プロセスと熟度の統一

首都のボゴタに到着してすぐに、北西部に位置するアンティオキア県ウラオに移動しました。先に北部・中部をまわって買いつけをおこなってから、南西部のウィラ県サン・アグスティンにあるカラーズ・オブ・ネイチャーの研究施設に10日ほど滞在し、Qプロセシング2のコースを受講する流れでした。
今回、コロンビアでの講座に参加したのは、日本で「Qプロセシング・レベル1」を受けた際の講師のもとで、ひとつ上の段階のレベル2を受けるためでした。日本でレベル1を一緒に受講した人たちのうちの半分ほどがレベル2に進み、9人の参加者のうち、エクアドルからきていたひとりを除いて、全員が日本人でした。

講座は、1週間ほどかけて座学と生産処理の実習をおこない、全部で7つのコーヒーをつくりました。その後、試験も現地でおこなわれ、私たちは全員無事に合格。難易度にかんしてはハッキリとはいえませんが、体感的には Qグレーダーよりは簡単だったでしょうか。それでも、同時期にインドネシアでおこなわれた試験では、半分程度しか受からなかったと聞きました。
初日は、飛行機トラブルで参加者が半分しか集まらないというアクシデントもありましたが、レベル1の振り返りや農園のマネジメントについての座学をおこない、翌日から全員でナチュラル・プロセスの実技に取りかかりました。

ナチュラル・プロセスは、もっとも伝統的な生産処理法のひとつ。収穫したチェリーの果肉を取り除かず、そのまま乾燥させる方法です。フルーティーなフレーバーや、甘くまろやかな味わいが特徴です。
乾燥の管理が難しく、期間も長くなりコストがかかるため敬遠されることもありますが、水資源の問題が深刻になっている近年は、水を使用しないことが注目され、サスティナブルな生産処理として再評価が進んでいます。
Qプロセシング2の実習では、チェ リーを受けとって、まず、ソーティング(選別)をおこないました。
ソーティングは、大きくわけて比重選別(フローティング)と色選別(カラーソーティング)、サイズ選別の3種類があります。それぞれの方法で使用するマシンが異なり、レベル1で学んだ概要をもとに、じっさいに使いながら目的や場面に応じてどのように使いわけるのかを学んでいきました。

たとえば比重選別は、チェリーを水に入れることで葉っぱや枝などを除去しながら、チェリーの重さ=密度で選別する方法です。未熟なものやドライポッド(乾燥しすぎた果実) などの欠点のあるチェリーは水に浮くため、その段階で取り除くことができます。
いっぽうカラーソーティングは、チェリーの色によって未熟/過熟なチェリーを選別する工程です。機械によっても精度の差があり、設定を変えながら、どの程度の精度で選別できるのかを確かめたりもしました。
日本にいると、じっさいにマシンを触る機会はありません。選別用のマシンだけでなく、糖度計や水分値計なども含め、使ってみて初めて知ったこともたくさんありました。



ナチュラル・プロセスにおいて、チェリーの選別はとくに重要な作業です。
熟度別に、緑色のものから、赤、そして黒くなったものまでチェリーを並べ、どのレンジのものを使用するか、ターゲットを決める。その目標に応じて、カラーソーターをセッティングする。機械ではどうしてもある程度の範囲までしか絞ることができないので、そこから先は手作業に移ります。また、見た目ではターゲットのレンジから外れていても、糖度計を使い、適切な熟度を保てているものは使用します。
そのようにチェリーの熟度を揃えるのは、それが乾燥に大きく影響を与えるからです。
ナチュラル・プロセスにおいて、過熟のものはある程度許容できますが、いっぽうで未熟なものは水分が抜けないため、乾燥が進まなくなってしまう。そのことで腐りやすくなり、欠点の発生につ ながってしまいます。
また、その後の乾燥工程の最中も、室温や湿度、豆の温度や重量を計り、記録を取りながら管理していきます。たとえば夜よりも翌朝のほうが重量が多い場合は、空気中の水分が吸着しており、カビや劣化のリスクが高まります。その場合は、チェリーを保護しなければいけません。

ナチュラル・プロセスにおいて、きれいな味わいをつくるためにもっとも重要なことは「乾燥にあたっての統一感をどうやってつくるか」ということです。それを実践的に理解できたことは、今回のQプロセシング2コースのなかでも、大きな気づきを得たポイントのひとつでした。
「熟したチェリー」といわれると、たとえば果物に置き換えて「このタイミングで食べる」といったふうに、決まった熟度の指標があるように思いがちです。
しかし、チェリーを乾燥させる環境は農園によって異なり、それによって「熟した果実」のレンジも変化します。さらに、ナチュラルが過熟側を許容するのに対して、ウォッシュドは未熟側を許容するように、生産処理法によっても異なる。喩えれば、料理によって酸が残っていたほうがよかっり、熟しきっていたほうがよかったり、使いわけるようなイメージでした。
私たちも含め、「熟したチェリーを使う」という表現を使ったり目にすることも多いですが、それが「環境やプロセスに適した熟度のチェリーに揃えること」を指すという内実は、じっさいに体験しなければわからなかったことだと思います。

次回は、ナチュラル・プロセスとはまたべつのかたちで「統一感」を目指す、ウォッシュド・プロセスについて書いてみたいと思います。

オリジナルマガジン”Pneuma”ISSUE44より抜粋

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